住宅特集1707
今月号は「間取り・仕切り」特集ということで大胆な間取りによって既存の概念を乗り越えようと試みられているプロジェクが集められている。
新建築住宅特集2017年7月号面白い。#住宅特集 #新建築 pic.twitter.com/kVGVw6GyWI
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2017年6月20日
海法圭さんの「東成瀬の4層」は既存の建具を改修することで空間の分節方法を変化させるという、ありそうっちゃありそうだけどこれまでやられていなかった方法が試みられていて、新しい方法の可能性を開いているように思えた。同様の手法はダイスケモトキさんの「NEST上野」でも試みられている。仕切る/開ける以外の透けるという操作。
今月号の中で多数派を占めていた「全体をスキップフロアの大きなワンルームとして床のレベル差によって空間を分節する」という手法は土浦亀城邸(1935年)なんかの頃から延々と繰り返されている近代・現代住宅では古典的な手法が現代でも普通に共感されている事実に、構成を発明することの威力やこの方法事態にまだまだ開拓の余地があるんだなぁと思わせられる。スキップフロア型の作品群に通底しているのは「レベル差はバリアかもしれないけど、それ以上に住人が主体的に空間を使いこなすステップとなるのだよ」という竹原さんの一言に集約されるように思える。
次に多いのが軸を振って空間をつくるタイプで、こちらもスキップフロア型と同様の感想。木村・松本さんの「house I/atelier I」は、道路に直行させた切妻屋根の軸に対して、壁の軸を振るという手法を試みている。島田さんの2作品はスキップフロア型×軸振り型の交配種。先月号の表紙を飾った中山さんの「弦と弧」も似たようなアプローチだったけど、それに比べるとグリッドにそったリジットな作品。藤野さんの「グリッド」というタイトルだけあって3×3=9スクエアグリッドに添ったリジットな内部空間を作っている。ヴォリュームは45度に振ってできたヴォリューム/ヴォイドの関係によって屋外空間をつくった上で、さらに屋内に植栽や土間といった屋外の要素を取り込んで内外の距離感を作り出そうとしている。
同様に9スクエアグリッドを用いているアトリエ・ワンの「KURA NINE」では、深い軒をつくるという日本の建物で一番超古典的とも言える操作で内外の繋がりを作っていて、いやー軒って凄いなぁと思う。あと、9スクエアグリッドをパラーディオにまで繋げたり、中心性と拡散性を持つという特徴をつく視座は魅力的。
ちょっと異なるアプローチをしているのは、住まいの中心に末田ダイニングの中心性や各空間を繋げる手がかりとして吹き抜けを利用している手嶋さんの「牟礼の家」と横内さんの「東灘の家」か。この2作品は純粋に安心感があるなーとか吹き抜けの感じとか宮脇檀っぽいなーと思って来歴を見ると前川国男と吉村順三に師事していると知ってああやっぱりと妙に納得。
久野さんの「16の部屋」は同じ寸法のヴォリュームを反復させて各空間の特徴を見いだして設計を進める手法は機能的でないつくりかたの1つだと思っているので共感できるし、そのうち自分でもやってみたい。木造で4層かつ最上階に水周り、それを在来の工法で実現することで通常のコストに抑えているのは凄い。
とここまで書いて、表紙の藤野さん「グリッド」も透けてるやん!ということに気づいた。