再生建築の全てを解説するブログ

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再生建築のメリット(4)旧い建物でも耐震化させて安全にできる

耐震基準は時代により変わる

日本の建築基準法では、耐震に関する規定は大正 13 年に初めて盛り込まれています。そしてそれ以降は、大地震を経験するたびに規定の改正が行われるというサイクルを繰り返しています。これは、それまで完璧に耐震設計されていたと思われていた建物が地震により倒壊することがあると、そのたびに技術者がそれらを調査し、それまでの耐震基準で足りなかった箇所を改正しているためです。


以下の図は、過去に発生した震災と耐震基準の改正を時系列で示しています。大震災の後に耐震基準の改正が行われていることがわかりますね。

この図からもうひとつ分かることがあります。それは、耐震基準の改正は、だいたい十数年〜数十年おきに行われているということです。これがどういうことかというと、
築数十年が経つ建物は、新築時は当時最新だった計算方法や規定にもとづいて耐震設計がなされているけれど、ほとんどがその後に耐震基準が改正されており、現在の耐震基準では設計されていない
ということです。このように、当時の耐震基準(旧耐震基準)に則って設計・施工されたため、現行の耐震基準(新耐震基準)に則って設計・施工されていない建物のことを旧耐震建築物と呼びます。旧耐震建築物は、旧耐震基準にもとづいて設計・施工されているため、現在の耐震基準で構造計算をすると耐震性が不足していることがほとんどです。


ちなみに、現行の耐震基準は昭和56年(1981年)にほぼ出来上がったものです。ということは、昭和50年までに建てられた建物は、基本的には全て現在の耐震基準を満たしていない旧耐震建築物である、ということになります。

耐震性を確保する流れ

僕が働いている設計事務所では、新築よりも再生の相談を受けることがほとんどなのですが、旧耐震建築物を再生してさらに数十年使い続けるためには、ほぼ全てのプロジェクトで建物の耐震化が必須になっています。旧耐震建築物を耐震化させる方法は耐震改修促進法に定められており、だいたい以下の様な流れで行います。

耐震診断耐震診断とは、建物の調査と構造計算により、既存建物の耐震性がどの程度不足しているのか、明らかにする手続きです。診断は主に以下2つのことを行います。

1)構造調査

柱や壁のコンクリートを抜き取ったり、内部の鉄筋を測定したり、既存躯体(骨組みのこと)のコンクリートなどが健全であるかどうかを調べます。

ダイヤモンドカッターでコンクリート壁を繰り抜き・・・

抜き取ったコンクリートコア。これは別の試験所で圧縮して潰すことで、コンクリートの強度を調べます。

抜き取った孔は埋め戻す

仕上げに塗装をしてこんな感じ

2)構造計算

既存建物の図面を復元して、構造調査により得られたデータをもとに、コンピュータで計算。計算書はこんなに分厚いものになります。

補強設計・補強工事耐震診断にもとづいて、どんな補強をどこで行うのかを検討します。ここからやっと設計っぽい仕事になる。詳しくはコチラで。

耐震判定

耐震診断や補強設計は、どうやって進めるべきかが耐震改修促進法に定められているのですが、世の中にはそれとは全く違う方法で(ぶっちゃけテキトーに)やってる設計者も中にはいます。必要な調査がなされていなかったり、計算の根拠があいまいだったり、本当にテキトー。

でも、一般の人にとっては建築家や設計者から「ハイっ」て提出された構造計算書が正しいかどうかなんて、分かるわけがない。では出されたものを黙って信じるしかないのか・・・?この計算書がテキトーじゃないって誰が分かる?

それを保証してくれる仕組みがちゃんとあります。それが、耐震判定という手続きです。ざっくり言うと、専門の第三者機関による客観的なチェックです。指定された審査機関で開く大学教授など有識者の委員会で、診断書のチェックを受けることができます。診断の内容が出来切なものであると認められた場合は、判定書という証明書が発行されます。つまり、オーナー側からすると、「私はちゃんと適切に耐震診断をしています!」と胸を張って言える状態になるのです。


まとめ


・これまでは大きな震災があるごとに建物全体の耐震基準が改正されてきた。
・現在の耐震基準は昭和56年(1981年)におおよそ完成しており、それより以前の建物は旧耐震基準で設計されている。
・旧耐震建築物(旧耐震基準で設計された建物)は、ほぼ確実に耐震性が足りない
・法律で定められた耐震診断や補強設計の方法があり、耐震判定を取得することでお墨付きを得られる