再生建築の全てを解説するブログ

 既存を活かすからこその価値を😃

ニトリがシャープの本社ビルを店舗として活用する場合のToDo(再生建築的に)


シャープが本社ビルをニトリに売却するみたいです。
ニトリは買ったビルを店舗として活用するそうな。のでしょうか?*1


シャープ本社ビル、ニトリに売却で調整…数十億

事務所ビルはそのまま店舗としては使えない


ところが、事務所ビルをちょろっとだけ直して店舗にする、というのは実はできません。
それは以下のような理由によります。

  • 本社として使われていることから、建築基準法上は事務所という用途になる。(と思われる。)

  ↓

  • それをニトリが店舗に転用する場合、用途は事務所から物販店舗になる。(と思われる。)

  ↓

  • つまり、用途変更の確認申請が必要になる。


事務所ビルとして建設・利用されていたものを勝手に店舗にはできないということですね。


この続きとして、用途変更だけをすればOKなのか?
という点から検証します。



建築基準法による規定のなかで、
物販店舗と事務所で異なるものとして
階段を考えてみましょう。


想定される床面積あたりの建物利用者数は


物販店舗>事務所


です。そのため、有事の際にはスムーズな避難ができるように、
店舗は事務所にくらべて大きな避難経路を確保しなければならない仕組みになっています。
具体的には以下のような考え方です。

  • 避難階段における幅員・蹴上・踏面・踊り場の位置などが、事務所にくらべて厳しめに設定されている。

  ↓

  • 事務所ビルとして使っていたままの状態では、現行の規定に適合しない。

  ↓

  • 上記の状態では、避難階段は現行の規定に適合させなければならない(詳しくは建築基準法参照)。


  ↓

  • 階段をつくり替えるとなると、大規模の模様替えという確認申請が必要になる。(諸条件あり)


いかがでしょうか?
ここまでで、

  • 事務所ビルはそのまま店舗としては使えない
  • 店舗として使うためには確認申請(用途変更+大規模の模様替え)が必要
  • つまり、シャープ本社ビルをちょっとリノベしてもニトリの店舗として活用できない。


という3点が整理できました。



設計する前に検証が必要なこと


では、どんな方法で再生していくのか?
という視点からToDoを整理していきます。


既存状態の整理

  • 書類の整理
  • 既存図面の復元


建物の調査

  • 実測などをして、復元した図面と既存建物とが整合せいているかをチェック。
  • 耐震診断のための躯体調査。


法チェック

  • 違法部分はあるか?あればそれはどのように対応すればよいか?
  • 既存不適格部分はあるか?あればそれはどのように対応すればよいか?
  • 確認申請が必要なことを行政と協議。


構造的な方針

  • 本社ビルは旧耐震建築物なので、おそらく耐震性は不足している。
  • どのあたりにどの程度の補強が必要となるか?(正確に把握するには耐震診断が必要)。


計画的な検討

  • 上記の諸々の検討をふまえてプランニング。


ざっと列挙したところ、
だいたいこんな感じでしょうか。
再生建築の設計する前にはこれだけの作業が必要となります。



では、また!



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*1:リンク先には「ニトリは店舗として再開発するとみられる」とありますが、これだけでは既存建物を再生するとは限らないので書き換えました。