まだまだこれが知られていないと実感。
「検査済証なし」といっても「違法」とは限らない
「検査済証なし」と「違法」のちがいについて書いておくです。
既存不適格とは
結論的には
新築時は適法だったけれど、そのあと法改正によっていまの法律にあわなくなったもの
です。
既存不適格建築物とは、建築基準法の施行又は適用の際、現に存する建築物又は現に工事中の建築物で、施行後の規定に適合しない部分を有するものをいい、これは違反建築物と扱われない。
— 宅建試験対策bot (@takken_test) 2015, 7月 5
建物というのは何十年も使われるので、建物が建ったあとも新しい法律ができたり、法律が改正されたりします。
そうすると、新築のときには法律にあっていたけれど、改正後の法律にはあっていないという状態になります。
で、すべての建物をいまの法律にあわせて改善させるべきなのかというと、そんなことは現実的ではありませんよね。
だから既にある建物は、昔の法律にあっていれば、いまの法律にあわせなくて良いという措置がとられています。
これはあらゆる分野で起こることですね。税法、道路交通法、会社法などなど。
ここでは、会社法と同じように考えてみると分かりやすいかも知れません。
いまでも有限会社というのが存在しますが、2006年の会社法施行によって、今では有限会社の新設はできなくなっています。
しかし、2006年に会社法ができる前から存在していた有限会社を廃止するなんていうのは現実的ではありません。
だから、会社法ができる前から存在していた有限会社は、いまでも存続が認められています。
有限会社(ゆうげんがいしゃ)とは、日本において過去に設立が認められていた会社の形態の1つである。2006年(平成18年)5月1日の会社法施行に伴い根拠法の有限会社法が廃止され、それ以降、有限会社の新設はできなくなった。
— まる (@596sama) 2015, 8月 24
建築基準法もこれと同じような考え方で運用されている、と思えば分かりやすいかも知れませんね。
たとえば下記のような状態にある建物があるとします。
こういった場合は、変更後の許容される容積率にあわせて建物をけずる、なんてことはしなくてもよいです。
ぼくたちはこれを「既存不適格の維持」といったりします。
ただし、そもそも違法につくられていた建物はまったく別ものです。
たとえば下記のような状態になる建物があるとします。
こういった場合は、そもそもが「違法」なので「既存不適格」ではありません。
それを維持することは基本的にできず、現在の法律にあわせて是正するなどの措置を指導される可能性があります。
※具体的な方法は個別に行政協議をします。
「検査済証なし」でも「違法」とは限らない
世の中には検査済証をとっていない建物が山のようにありますが、だからといって全てが「違法」だとは限りません。
なぜなら、昔は工事が完了したらすぐさまバンバン使いはじめることが普通だったので、いちいち検査済証を取ることをしていなかったからです。
必要もない(と当時は思われていた)検査済証をわざわざ取るなんてことをしていたのは一部のかなりまじめな事業者や、公的な融資を受けていた事業者なんかです。
だから「検査済証なし」だからといって必ずしも悪意があってそうしているのではなく、「当時はそれが普通だった」というだけのことです。
実際、平成10年までは検査済証を取った建物はたったの4割くらいしかありません。
「検査済証なし」を「あり」にするには
ここまで、
- 「既存不適格」と「違法」が違うということ
- 「既存不適格」の定義
- 「既存不適格」は維持することができること
を説明してきました。
じゃあ「検査済証なし」の建物でどーしても検査済証がほしい、なんて時はどうすれば良いのか?
ぼくは完了検査が必要な工事をおこなって、検査済証を再取得することをおススメします。(ちなみに昔の工事に対する検査済証を「再発行」してもらうことはできません。あきらめましょう。)
「検査済証なし」でも、その建物が「違法」とは限りません。
既存建物が「違法」でなく「既存不適格」であることを証明できれば、検査済証を再取得することができます。
具体的な内容は、以下を読んでくださいってことで。
では、また!
はじめましての方へ
- 自己紹介:ぼくのことと再生建築について
- スタートのきっかけ:新築じゃない。でもリフォーム・リノベ・コンバージョンでもない、僕の仕事について
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