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 既存を活かすからこその価値を😃

ホームインスペクション

築年数の古いビルを買うときに不安になるのが、見えない部分の不具合や劣化。

・雨漏りは問題なのか

・耐震性は大丈夫なのか

こーいった不安は、既存建物を購入する以上、必ずつきまとってくる問題です。この問題について今日は書くです。

 

ホームインスペクション 

ざっくり言うと、「売買しようとしている中古物件が、問題ないことを多角的に調査、確認する手続き」のことを言います。制度の概要について、国交省のガイドラインを拝借しながら紹介します。太字や赤字は筆者によるもの。

 

何のために、何をするの?

背景と趣旨

  • 中古住宅は、新築時の品質や性能の違いに加えて、その後の維持管理や経年劣化の状況により物件ごとの品質等に差があることから、消費者は、その品質や性能に不安を感じている。このような中、中古住宅の売買時点の物件の状態を把握できるインスペクションサービスへのニーズが高まっている。
  • 一方で、現在民間事業者により実施されている「インスペクション」といわれる サービスは、中古住宅の売買時検査のみならず、新築入居時の検査やリフォーム 実施時に行うものなど様々である。
  • また、目視等を中心として住宅の現況を把握するために行われる現況検査は、最 も基礎的なインスペクションであるが、現場で検査等を行う者の技術力や検査基準等は事業者ごとに様々な状況にある。
  • このため、本ガイドラインにおいては、中古住宅売買時の利用を前提とした目視 等を中心とする基礎的なインスペクションである既存住宅の現況検査について、 検査方法やサービス提供に際しての留意事項等について指針を示すこととする。 これにより、事業者による適正な業務実施を通じて、既存住宅インスペクション に対する消費者等の信頼の確保と円滑な普及を図ることを目的とする。

 

具体的には何をするの?

基本的な考え方

  • 現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位 毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・ 検査結果を依頼主に対し報告することである。
  • 現況検査には次の内容を含むことを要しない
  1. 劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が何かといった瑕疵の有無を判定すること
  2. 耐震性や省エネ性等の住宅にかかる個別の性能項目について当該住宅が保有する性能の程度を判定すること
  3. 現行建築基準関係規定への違反の有無を判定すること
  4. 設計図書との照合を行うこと

 

検査の項目や方法

検査の対象

現況検査における検査対象の範囲は、以下を基本とする。

  • 現場で足場等を組むことなく、歩行その他の通常の手段により移動できる範囲
  • 戸建住宅における小屋裏や床下については、小屋裏点検口や床下点検口から目視可能な範囲
  • 共同住宅においては、専有部分及び専用使用しているバルコニーから目視可能な範囲 

 

検査項目

検査項目は、検査対象部位と確認する劣化事象等で構成され、劣化事象等については部位・仕上げ等の状況に応じた劣化事象等の有無を確認することを基本とする。

  • 確認する劣化事象等としては、以下を基本とする。【詳細については別紙参照】
  1. 構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの (例)蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等
  2. 雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高いもの (例)雨漏りや漏水等
  3. 設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの (例)給排水管の漏れや詰まり等

 

検査方法

現況検査の検査方法は、目視、計測を中心とした非破壊による検査を基本とする。

  • 目視を中心としつつ、一般的に普及している計測機器を使用した計測や触診・ 打診等による確認、作動確認等の非破壊による検査を実施する。

 

ホームインスペクションは完全ではない 

上記の赤字部分に記されていることを要約すると、

  • 劣化の有無はチェックするけど、あくまでパッと見で分かる範囲だけだよ。それ以上はその道のプロに任せてね。
  • 劣化があったとしても、それが建物の欠陥によるものなのか、それとも経年とかによる劣化なのかはぼくらには分からないよ。もし明らかに建物に欠陥があったとしても、欠陥の原因まではちょっと分からない。
  • 耐震性や省エネ性能、法的状態は分かりません。(ちなみに分からないまま買うといろいろリスクがあるよ
  • 設計図と整合してるかどうかはチェックしないよ。

という感じになるかと思います。

 

注意が必要なのがこの4点で、「ホームインスペクションをしたからといって問題が無い物件とは限らない」という点です。

 

このガイドラインが目指しているのは「そのままで使えそうな住宅かどうかを判別するためのチェック方法を統一する」ということなんだと思います。調査の範囲は目視や設備の動作確認などによるものとされていることからも、極力費用と時間をかけずにできる範囲のことに絞ってまずは既存住宅の流通を広めよう!という感じがします。

 

長期的な資産とするほどではないけれど、当分の間自分が住むくらいならこれでもいいよねって人には、色々と参考になる制度かも。ただし事業用にはビルオーナーの責任も大きくなるのでビル再生が得意な専門家に依頼した方がいいのかな、と思ったり。

なぜなら、このガイドラインだけでは以下のような問題があった場合にはそれを発見することはすごく難しいのです。

  • 構造躯体に問題があった。または旧耐震建築物で、現行の耐震基準を満たしていない。

→これらは、既存図面の詳細なチェックや構造躯体の調査をもとにした耐震診断というチェックが必要になります。

  • 現行の法令に適合していなかった。

→これは、目視ではなかなか分かりません。(逆に目視で明らかに分かるものはちょっとマズい気が。。。)。現行の規定に適合しているのか、既存不適格なのか、違法なのか、それは既存図面の詳細なチェックや場合に寄っては役所等との協議が必要になります。

 

事業用のビルとして運営するとか、長期的に保有したり住んだりすることを見越して買うのであれば、ガッツリ調査した方がいいのかな。

 

 

検査済証のない物件を所有するリスク

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平成10年までは検査済証なしの物件が大半なのです...。

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ガッツリリノベしたいのであればガッツリ調査も必須

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では、また!

 

 

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