ダリを理解するには|ダリ展レビュー
【六本木アートナイト:プログラム紹介】
— roppongi art night (@r_artnight) 2016年10月19日
ダリ展#六本木アートナイト2016https://t.co/uSyqXBFBbv pic.twitter.com/DKcnAfVcHf
ダリ展、行って来たので気づいたことをメモ。
もともとぼくがダリに対して持っていた印象というと
シュルレアリスムは破壊的だ。
— ダリbot (@dali_dali_hola) 2016年10月28日
しかし、それは我々のビジョンを限定する錠の留め金とみなされるものだけを破壊するものだ。
「焼いたベーコンのある柔らかい自画像」pic.twitter.com/MZ9RFgpw1n
みたいなイメージが自分の内側から湧いて来る孤高の天才系の作家だと思っていた。
けれど今回の展示会でその認識が180°変わって、むしろダリは古代から同時代の作家や作品について豊富な知識を学んでおり、そのデータベースを編集することによって創作をしたタイプの作家なんだという理解に変わった。
データベースの形成期
会場で最初にお目にかかるのがこれ。
魔女達のサルダーナ
La Sardana de las Brujas [The Sardana of the Witches] (1918) pic.twitter.com/pSFCSopr6S
— Salvador Dali (@LePetitDali) 2014年5月25日
1918年の作品。ダリが生まれたのは1904年だから、彼が14歳のときに描いたということだ。中2の歳でこんな絵を描くなんてかなり大人だなーと思っていたら、ある絵に似ていることに気がついた。
アンリ・マティス(Henri Matisse) 「ダンス」 ニューヨーク近代美術館 #マティス #HenriMatisse pic.twitter.com/WLhoqGvtJS
— 美術すき! (@fsc1234567) 2016年10月21日
この10年くらい前にマティスによって描かれたフォービズムの重要な作品を、ダリは明らかに意識している。
続いてこれ。
アス・ピアンクからのカダケスの眺望
Vista de Cadaques desde Es Pianc [View of Cadaques From Es Pianc] (1919) pic.twitter.com/fV6y01Qetd
— Salvador Dali (@LePetitDali) 2014年5月28日
これはセザンヌの影響を受けている。というより、セザンヌの絵を観て技術を学ぶために描いたという感じがする。
ポール・セザンヌ 「レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山」(デ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山) 1904-1906年 フィラデルフィア美術館pic.twitter.com/G83q6kfXjm
— 美術すき! (@fsc1234567) 2016年7月31日
ポール・セザンヌ作
— leaf (@leaf15820651) 2016年10月18日
「サント・ビクトワール山」
TOKYO上野 デトロイト美術館展 pic.twitter.com/3mILkYg1eR
どんどん次行きます。
ラファエロ風の首をした自画像
#hergünebirresim Self-Portrait with Raphaelesque Neck by Salvador Dali pic.twitter.com/AOdgFu0MNW
— Orion💫 (@Orionunevi) 2014年10月28日
この頃になるとタイトルで参照元を宣言し出す。これは1921年、ダリが16歳の頃の作品。今の日本だと、高校1年生が北斎と自分を重ねて村上隆風の自画像を描く、みたいな感じだろうか。
キュビズム風の自画像
salvador dali'nin sürrealizm öncesi kübist dönemi 'Cubist Self-portrait by Salvador Dali (1926)' via @LearnArtHistory pic.twitter.com/TtkXzlxSPo
— Ozgur (@GordonBardamu) 2014年5月18日
ブラック、ピカソの影響。
アス・リャネーの浴女たち
Banistas de Es Llaner [Bathers of Es Llaner] (1923) #Dali pic.twitter.com/BCYzWjifqn
— Salvador Dali (@LePetitDali) 2014年6月11日
こちらはぼくも大好きなスーラを下敷きにしている↓
The river Seine at La Grande-Jatte https://t.co/AvPbfJlRyC #arthistory #fineart pic.twitter.com/X2CXR317Su
— Georges Seurat (@artistseurat) 2016年10月25日
ほかにはコルビジェも活動していたピュリスムみたいな作風の作品も残している。
このように、10代の後半のダリは、当時評価を受けていた作家の作品を観ることで、技術を学びながら絵のトレーニングを重ねていたのだと思う。自画像でラファエロと自分を重ねていることからも分かるように、単純に技術的な修練というよりはオマージュを感じながら少しでも巨匠に近づきたいと想いながら絵を描いていたらしい。
10代半ばでそういったことに関心を寄せるのだからきっと教養高い家庭に育ったのだろうと思う。興味の対象も毎年のように移り変わり、この時期に培った技術力と歴史的な文脈の知識が全盛期を支えるデータベースになっているとぼくは思う。
にしても、中高生の頃にこんな絵を描けていたなんて・・・!
いろんな作家の作風や技法を取り入れていける器用なタイプだったみたい。
自分の作風を出しはじめる
ダリっぽさが初めて感じられた作品がこれ。
水の中の裸体
Desnudo en el Agua [Nude in the Water] (1924) #Dali pic.twitter.com/AUjII4wydQ
— Salvador Dali (@LePetitDali) 2014年6月16日
ダリっぽいと感じたのはほとんど直感だけれど、スケールの狂いや写実的なところに加えて、何を参照したかが分からなかったことが大きいのかも知れない。
子ども、女への壮大な記念碑
Monumento imperial a la mujer-niña [Imperial Monument to the Woman-Child] (1929) #Dali pic.twitter.com/6XJ3fHgz9q
— Salvador Dali (@LePetitDali) 2014年7月10日
この辺りになるともう一目瞭然でダリの作品と了解されるようになる。よく見るとモナリザが描いてあったりして、若い頃に吸収し続けた過去の作品がベースになっていることが分かる。
珍しいものだとルネサンスからマニエリスム時代の建築家が出て来たりする。。
パッラーディオのタリア柱廊
"Palladio's Thalia Corridor"
— Ronin (@fredcasualmente) 2016年7月19日
Salvador Dali
1937 pic.twitter.com/yEt78pZILe
関心の広さ
冒頭で10代のダリが様々な作家に惹かれながらトレーニングしていたと述べたように、全盛期のダリも広い範囲に関心を寄せて活動していたみたい。
特殊な装置を使うことで3Dに見える絵画らしい。
雲の中の戦い(立体鏡絵画)
昨日みた、ダリの絵 その1
— 碧 (@juliebu2_midori) 2016年8月29日
Battle in the Clouds [Stereoscopic Work] https://t.co/cQQp2GiVqh @museoreinasofiaさんから
昨日みた、ダリの絵 その2 安定打坐の透明な感じを絵にしたらこんなのでは?
— 碧 (@juliebu2_midori) 2016年8月29日
Battle in the Clouds [Stereoscopic Work] https://t.co/LaoyhH9PsA @museoreinasofiaさんから
絵画だけでなく舞台のデザインも手掛けている。こういった仕事をこなすことで経済的にも成功し、かつ大衆にもアピールできたみたい。
狂えるトリスタン
狂えるトリスタン|Mad Tristan|1938#SalvadorDali pic.twitter.com/E6sWHmiSFD
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
原子力をモチーフにしている。これまでの作品とは違って、過去の作家も作品も引用されている感じがしない。純粋に原子の世界を描こうとしているように思える。
素早く動いている静物
素早く動いている静物|Nature Morte Viante|1956#SalvadorDali pic.twitter.com/w0xbksC97f
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
逆にこれらは古典的な文脈に寄り添うことでアカデミックになっている。
ラファエロの聖母の最高速度
ラファエロの聖母の最高速度|Maximum Speed of Raphaelo's Madonna|1954#SalvadorDali pic.twitter.com/mEYOLUKqSx
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
手押し車
手押し車|Les Brouettes|1951#SalvadorDali #pantheon pic.twitter.com/Xa0qvJTVIh
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
原子力と切っても切れないヒロシマ・ナガサキもテーマにされている。
ラウニウムと原子による憂鬱な牧歌
ラウニウムと原子による憂鬱な牧歌|Uranium and Melancholica Idyll|1945#SalvadorDali pic.twitter.com/ng2gmpGsLe
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
ウォルト・ディズニーとのコラボまで!
ディスティーノ
ディスティーノ|Destino|
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
Walt Disney's & Salvador Dali - Destino 2003 (HD 1080p)#SalvadorDalihttps://t.co/4euXovmLI0 @YouTubeさんから
とにかく過去の文脈を参照しまくる
冒頭の繰り返しになるのだけれど、やっぱりダリってどこからともなく湧いてくる自分の内なるイメージをキャンパスに描いてるのではなくて、(ダリがいた)現代を色んな角度から芸術史の文脈に結びつけることで、現代を歴史上に位置づけるっていう作業をしていたように思える。
言い方を変えると、「今はこれまでとどう違うのか?」を描いてきたんじゃないかなー。
そういった作業の成功は、膨大にインプットされた歴史の文脈と技術力に支えられているんじゃないか、と思った次第。
ダリってなんか自分の中からイメージがわき上がってくる天才みたいなイメージがあったけど、むしろ若い頃に色んな作品を観ながら訓練して培った技術力や歴史的な文脈の知識、芸術以外にも幅広い関心や教養が創造力の源泉なんだと理解して、彼に対するイメージが180°変わった。
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年10月29日
では、また!
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