再生建築の全てを解説するブログ

 既存を活かすからこその価値を😃

第6回 生命の際

「建築の際」
第6回 生命の際
ゲスト:伊藤豊雄×福岡伸一×佐藤統


エマージング・グリッド」など、生命の要素を建築に取り込もうと活動している建築家の伊藤氏、「動的平衡」という斬新な視点を通して新しい生命観を語る分子生物学者の福岡氏、進化論的側面から文化や社会現象を語る進化生物学者の佐藤氏

という3者の視点から、建築と生命について語り合うイベントです。

伊藤氏は
「流れのダイナミズム」という動画を最初に見せて頂きました。
これは画面左側にある円の物体に向けて流体の流れを当てるシュミレーションの動画で、物体に当たることで生じる流体の渦が印象的です。伊藤氏はこの渦のような建築をつくりたいのだと。

それをどのように建築とするのかが氏の関心である。
初期のプロジェクト、日仏文化会館コンペでは、宙に浮かぶメディアシップというコンセプトを提示した。桜の木の下に人が集まり、衝立で囲って花見をするように、ここでは情報に集まってきた人をゆるく囲うというイメージである。
学生の案ということで結果は落選。


しかしその感覚はせんだいメディアテークのゆらゆらとしたチューブに引き継がれている。
チューブは上下の移動、視覚的なつながり、構造、上から降り注ぐ光、、、平面的に温度分布に変化をもたらすなど生命のような働きを目指しているとともに、変化のある場所制をつくり出そうとしている。


そのコンセプトはゲント市のコンサートホールでさらに発展させられている。
全体として、内外を分断してテクノロジーによる環境を制御する近代的な建築に対して、フラクタルに細分化していくような建築をつくりたいと。。。


福岡氏のプレゼンは昆虫採集に明け暮れた少年時代の話から始まる。
ルリボシカミキリを捕まえることに夢中になっていたというエピソードは、同じくらい虫取り少年だった自分には深く共感を覚えるものだった。(ちなみに伊藤氏も昆虫少年だったらしい)ルリボシカミキリを追いかけるうちに福岡少年は、昆虫を捕まえている自分が、本当は世界を記述したがっていることに気づく。やがて彼は分子生物学の世界に入り、様々な遺伝子を捕まえる。


氏の発見した遺伝子にGP2というものがある。
この遺伝子の働きを知るために、GP2の抜け落ちたノックアウトマウスを作って実験するが、マウスはずっと健康そのもの。
実験は失敗だったのか、と思いかけたとき、ある言葉を思い出した。

「生命は機械ではなく、流れだ」

若くして謎の自殺をとげた学者、シェーンハイマーでの言葉である。彼が生きていた当時は、時間を微分的に静止した機械的生命観が主流であった。すなわち、ガソリンを燃料に走る車のように、ものを食べて燃焼させて活動エネルギーを得ていると思われていた。

彼はそれを分子レベルで見極めようとした。
食料としてマウスの体内に取り込まれた物質の流れを、原子の同位体を使って確認したのだ。当時の理解では、食料としてマウスの体内に取り込まれた原子は燃焼されて二酸化炭素として体外に放出されるはずである。しかし以外にも原子は体全体に散らばり、身体の一部としてそこに留まったのである。

つまり、体をつくっている分子や原子はずっと留まっているのではなく、絶えず入れ替わっているのだ。物質的には全く入れ替わりながら、定常状態を保っている。
各々の細胞が1つの機能を持っているのではなく、ジグソーパズルのように相互補完的な関係にある。ノックアウトマウスに異常が見られなかったのは、実験の失敗ではなく、成功だったのだ。

最後に佐藤氏。
生命を厳密に定義することは困難(自己増殖できないラバ、コンピュータウイルス)
逆に参照される場合には、好みに応じて自由に使えわれてきた。(ダーウィンの進化論をもとにした自由民権運動vs明治政府擁護論)


次に氏の考える生命的ものについてでは、生命は個体で語ることはできず、環境と不可分であること、環境との関係性で捉える事が重要だという。


ここでプレゼンは終了し、全体での議論へ。