再生建築の全てを解説するブログ

 既存を活かすからこその価値を😃

再生建築のメリット(7)価値のある遺産を残すことができる

解体の危機にあった歴史的建造物を再生
冒頭から僕が働いている事務所の設計監理事例をご紹介します。

三宜楼

これは大正から昭和初期にかけて貿易港として栄えた、北九州市門司港という場所で料亭を再生した事例です。木造3階建ての大規模建築物であるとともに、昭和初期に建てられた料亭の建屋としては九州最大級を誇ります。特にスゴイのは、2階の通称「百畳間」。直径300mmの柱をいくつも通すことで床を支えています。
こんな大工仕事は現在ではもうほぼ不可能です。

所有者の方が亡くなられたのを期に売却・解体の危機にありましたが、市の意向などによりかの高浜虚子も句を読んだ和室、当時の大工さんが技工を凝らした下地窓や欄間などを保持しながら再生しています。耐震壁の新設や基礎の補強なども行い耐震性もバッチリ確保しています。

ごはんも食べられますので、お近くのかたは是非。


遺産=旧いということ
世界遺産に指定されているような建築物は、そのほとんどが築数百年〜数千年を経ています。(中には築数十年で世界遺産にしていされている建築物もありますが)数百年、数千年もの間壊れることなく維持されてきたということはある意味丈夫なことを証明しているのですが、それでもやはり旧いことに変わりはない。


ネパールの世界遺産も被災


ネパールの世界遺産も被災

カトマンズ時事】ネパール大地震で、国連教育科学文化機関(ユネスコ世界遺産に登録された七つの歴史的建造物のうち、四つが壊滅的被害を受けたことが29日、分かった。観光業を含む同国のサービス産業は国内総生産GDP)の5割を占め、国民にとっては最大の雇用先。観光地の修復には最長10年かかるとみられ、同国経済に深刻な影響を及ぼすのは間違いない。
 1979年に世界文化遺産に登録されたカトマンズ盆地は、カトマンズとパタン、バクタプルの三つの古都にあるダルバール広場と、12〜18世紀に建立された四つのヒンズー教仏教の建造物群から成る。
 観光局のガウタム長官は時事通信の取材に「3都市のダルバール広場では5〜8割の建造物が倒壊。これにチャングナラヤン寺院を加えた計4カ所が壊滅的打撃を受けた」と明らかにした。
 倒壊した建造物がどの程度復興できるかは不透明だ。同長官は「がれきと化した建築資材をどこまで再利用できるのか、専門家の意見を聞かないと分からない。国際社会の支援が必要だが、修復できるとしても5〜10年はかかるだろう」との見方を示す。


観光を含むネパールのサービス産業は、国内総生産GDP)の5割を超えるそうです。世界遺産といえば、国の産業の心臓部ともいうべき存在でしょう。その9割が損傷しており、復興には10年かかるとは。。中には損傷が激しすぎてどうしようもない遺産もあるでしょう。社会に対するダメージは計り知れないです。。


あと、ここまで死者の数が増加したことと建物の強度は無関係では無いと思います。文化財などの遺産はきちんと処置しておかないと世代を超えて引き継ぐことは出来ないし、むしろ未来を担う人材をこのように失う原因となるということですね。