再生建築の全てを解説するブログ

 既存を活かすからこその価値を😃

【読書】「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係


この本、一般的にイメージされる「シェア」についてはほとんど書かれていません。


「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係

「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係


近代都市論


序盤での必見は西沢大良さんによる近代都市論。
近代都市の成立過程が、産業構造を焦点に当てて説明され、現代における近代都市の限界を示されます。その限界を超えるためには「シェア」が何を果たしうるのか?それを考えるための章です。



30代の建築家


このあたりは35歳くらいの建築家の方が「シェアの実践」として自作を紹介しているけれど、
「シェア」の実践というよりは、同年代の建築家の作品集といった感じがする。
ここで登場している建築家たちは、学生の頃にOMA(に影響されたSANNA)に影響され、
「形式」や「ダイアグラム」によって建築をつくってきた世代だ。
本書の中盤はさながら図式の百花爛漫。


図式的に建築を考えることは分かるのだけれど、
どうしてこれをわざわざ実際に建築する必要があるのか、
どうしても分からなかった、学生時代を思い出した。
おもしろい図式さがしゲームなんて、模型だけで充分じゃないか、とか思ってたな・・・。


以下は2008年のSD Reviwにて、平田晃久さんによる講評です。この批評がそのままあてはまるんじゃないかとも思います。


新しい形式のオンパレードともいえるようなその様子に、あたかもすでに枠組みが決まっている中で行われるゲームのような雰囲気を読み取られはしないか。
僕達は、暗黙のゲームの前提の中で小さな優劣を競い合いたいのではない。むしろ、結局は何をテーマにできるかが問題であるはずなのだ。

SD〈2008〉―特集1・SDレビュー2008、特集2・発信するイタリアの小都市

SD〈2008〉―特集1・SDレビュー2008、特集2・発信するイタリアの小都市



若手建築家の座談会


一方、最後の座談に登場する建築家たちは、ぼくと同じか少し上の世代。

彼らに共通しているのは、

  • ネットワーク状の世界を3DRPGのようにとらえる一人称の視点
  • 自分がいま立つ場所からいろいろなネットワークに飛び込んでいき、世界を少しずつリライトしていくという行動スタンス

の2点のようです。



そんな感覚が今っぽく思えるのは、塚本由春さんが403architecture[dajiba]を評した言葉のとおり、


統一された意思のものとに、完全なるものとして実践するという、20世紀後半以降建築を大量に生産してきた条件が、今地滑りを起こしている現実をうまくつかんでいる

からだろう。(住宅特集2014年10月号より)

新建築 住宅特集2014年10月号

新建築 住宅特集2014年10月号



大げさだければど、いま、ひとつの時代が終わろうとしているのかも知れない。


俯瞰的視点の時代から一人称視点の時代へ。

「図式」により「形式」的に建築をつくっていく時代から、まわりのネットワークに参加していく時代へ。

目に見えるモノをデザインする時代から、見えないつながりをデザインする時代へ。


この本は、そんな時代の替わり目の記録になるのかもしれない。



主体的でありえないこと


この本にそんな感想を抱きながら自分の経験に引き寄せて考えてみると、
ひとつの主体たる発注者と、もうひとつの主体たる設計者が、ひとつの理論で建築をつくる
というモダンな感覚で世の中を捉えることはやはり難しのかなぁ
と思う。


ぼくが先日までかかわっていたプロジェクトは、

  • ある不動産屋さんAから都心の店舗テナントビルの再生を受けるも、いろいろあってその時は契約にいたらず
  • 数年後に別の不動産屋さんBから全く同じビルの全くおなじ相談を受け、今回は無事契約に至る
  • ビルオーナーCの意向により、専有部を広くとる計画で進めていた。
  • ある不動産屋Dさんが土地・建物を購入したことで、施主が交替した
  • 新たな施主Eは占有面積よりも占有部と共用部の形状にこだわりを見せ、プランは8割くらい変更
  • あるアパレルメーカーFが入居を検討しはじめ、そのテナントの意向により再検討
  • 不動産屋さんDが土地・建物を購入、外観を再度考え直すことに
  • 不動産屋さんDが別のテナントGと入居の交渉をはじめ、そのテナントの意向で全てが白紙にもどる可能性が出てくる
  • 結局そのテナントGとは交渉がまとまらず、再度検討した外観で進めることに
  • 設計完了して確認申請、ゼネコン見積もりも完了
  • ただし新たな入居テナント候補が出てくるたびに多少のプラン・外観の変更は発生すると思われる(下手すると全てが白紙にもどる可能性もゼロではない)
  • 建設費高騰などにより予算の調整に時間がかかりペンディング

という感じで進んでいた。
新しいテナント候補が出てくる度に施主の言うことが変わるし、
そもそも施主がコロコロ変わるし、
発注者が「ある意思をもった一つの主体」であることなんてほとんとなかった。



本当はここからが本題なのだけれど、ちょっと時間がなくなってきた・・・。




では、また!



最近よく読まれている記事