改修設計の名作として知られる、カルロスカルパのカステルヴェッキオ。
大学院の卒業旅行で訪れたときに初めて見ましたが、僕が見たものでは彫刻や絵画の
会場構成としても最も素晴らしいものだと思っています。
カステルべッキオとは
知らない方のためにざくっと概要を。
カステルヴェッキオは、イタリアの古いお城を美術館に改修してつくられた美術館です。場所はヴェローナという都市にあります。
外観はこんな感じ。
さて、肝心の内部はどんな感じでしょうか。
エントランスを入るとこんな展示室があります。奥の壁から次の展示室が垣間見えますが、なぜか彫刻がバラバラな向きに置かれています。普通だったら入り口側に正対し
どうしてこんな配置をするのでしょう?
めくるめく変化する視線と風景
さらに奥へと続くと展示室はこんな感じになります。
左右の壁にそれぞれ1つづつ開口があり、次の部屋に続いていることが分かります。そして、左の開口は何やら壁にびっしり模様があるみたい。一方の右側の開口には奥に絵が見えます。左の部屋と右の部屋で異なった趣向の展示がなされてそうな気配がしますね。
左を向くと、こんな展示室でした。彫刻や絵画が展示してある奥に、次の部屋へと続く十字型の開口が見えますか?
これです。
開口の向こう側にはスタンドに立てかけられた1枚の絵が展示され、その奥の壁面には2枚の絵が掛けられています。この奥にもさらに展示が続くことを予感させますね。
キリがないのでいったん戻ります。
内部は一面に模様が描かれています。さっきの部屋とはだいぶ違いますね。そして何故か部屋の中央にある一番大きな絵が反対側を向けて配置されています。ここからは絵が見えません。
部屋の奥まで進んで振り返ると、
絵の奥にはもう次の部屋へとつづく開口が見えます。そして開口の奥には1枚の絵が。
こうやって展示物を追いかけてずんずん進んだりくるくると視線を回転かせることで、ひとつの対象を実にいろいろな角度から見つめることになります。めくるめく視点を移らせているうちに、自分がみている風景がどれも異なるものであることに気がつきました。
上から光がさしこんでくるところもあります。黒の壁が光を強調していますね。
これは設計時のスケッチ。光の入り方が検討されていたことが分かります。
全部バラバラなのに統一している
いかがですか?
カステルヴェッキオの展示が、くるくると視線を移り変わらせながら次々に異なる風景を見せてくれる点を紹介しましたが、
スカルパのデザインが本当に優れているところは、
全部がバラバラなのにそれが統一的な、ある調査された状態をつくりだしている
という点です。ひとつのルールで世の中が捉えられないくらいに複雑になった現代では、こんなモノづくりが必要なのではないかと思います。つまり、「右に倣え」で同じモノをつくるのではなく、かといって皆が好き勝手にふるまってカオスになるのでもなく、それぞれが異なる個性を持ちつつもそれらが調和しているような状態を、つくりだすことが求められていると思います。
では、また!
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