答えられなかった答え
友人に向けたメッセージです。彼以外は完全に読んでも意味不明です。
"江頭2:50の好きな名言ランキング
— あなたが好き (@love8952000) 2016年3月1日
1位 1クールのレギュラーよりも1回の伝説
2位 99人があきれても1人が笑うなら 俺達の勝ちじゃねぇか
3位 やろうと思ったら今すぐやれ! 人生に保険なんてないんだよ pic.twitter.com/ElBjTW0vGE"
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いや、本当に彼以外が読んでも無意味です。
「彼」に該当する本人はもう気がついているはず。
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先日はわざわざ遠くまでありがとう。久びさにゆっくり会えて良かったわ。
九州に帰るなんて話をする日がこんなに早く来るとはねー。つい数ヶ月前に会った時は「いつかは九州に帰るんかなー」とぼんやり想像するくらいで、まだ当分は東京で暮らし続けるだろうとお互い思っていたけれど。一寸先は闇とはまさにこのことやなー。
そっちも結婚を機に大きな買い物について本腰いれて考えなきゃいけなくなって、30歳ってそういう年なのかなーとか思ったり。そんな近況を昨夜のように話をしてくれたことや、「どんな建築をつくりたいの?」と聞いてくれたことは、素直に嬉しいです。なんとなく上手く伝えられない気がして、あの場ではああいった答え方になりました。
ここで言うのもなんだけど(そもそもこれを読んでもらえている可能性がかなり低い)、結論から言えば「既存を活かすことで得られる豊かさをデザインしたい」というのが現状での答えになります。新築では得られない豊かさというのは既存不適格を維持することや、現代ではできない(やらない)素材や様式や工法を取り入れることや、そこそこのモノを比較的低コストで手に入れられること、工期が短いので家賃を払って他所で暮らさないといけない期間が短いなどまあ色々な種類があります。
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その中で特に可能性を感じているのは、「既存のかたちを読替える」ということです。
「かたち=機能」という関係
オノ・ヨーコさんが以前コンフォート・チェアというアート・パフォーマンスしていました。
「イスを使った事のない人が初めてイスを見た時の行動とはどんなものなのか。イスとコミニュケーションをとってみる」
(世界一受けたい授業HPより)
一瞬、”???”ってなるけど、それは
ぼく達の中で椅子の「かたち」と座るという「機能」が分ちがたく結びついているからです。
”椅子なんやけ座るためのものやろ!”と。
そこから一歩だけ引いてみて、「かたち」と「機能」の関係を忘れてみた時に、ぼくは
このパフォーマンスが椅子のあの「かたち」を座るという「機能」から解放しようという試みだったんかな〜
と理解しました。
僕らの身のまわりにある物は、
ふつうある「コト」(=用途・目的・機能)に最適な「カタチ」(=形状・素材・寸法)をしています。
「飲む」ためのコップ、「人を乗せて走る」ための車、「座る」ための椅子…。
機能的な(=コトとモノを一致させる)方法は「早く・安く・大量に」作るにはもってこいだったから、
そもそも床が足りない上に人がどんどん増えていた頃はすごく有効だったのね。
大げさに言うと、20世紀は”全ての「コト」に最適な「モノ」を発明しよう!”の時代やったんやろうね〜。
20世紀の人たちはナイスな言葉をたくさん残している。
こんな感じに。他にもたくさんある。ル・コルビュエジの有名な言葉の一つに「住宅は住むための機械である」があるけど、それを写真でも表現しているということです。 pic.twitter.com/7orUC45LT9
— ノエル(未発育都市) (@mihatsuikutoshi) 2014, 7月 25
ルイス・サリヴァン(建築家):形態は機能に従う
— ものづくりの言葉 (@shinonome20) 2015年11月2日
ところがあの時に言ったように(言ったっけ?)、建物は「モノ」に比べて「コト」の寿命がかなり短い。
だから建物が建って時間が経つと「コト」が消えて「モノ」だけが残っちゃうのよ。
(子どもが独立して老夫婦が自宅を持て余しているっていう話は山ほどあるよね...)
さらに、これからは人がどんどん減って行く。
ただでさえ床が余ってる上に機能的に(=「モノ」と「コト」を一致させて)建物をつくると
もっと床があまっちゃう。
これから家を持とうっていう世代は、両親祖父母とは違う方法を考えんといけんのやろうねー。
これ以上床を増やしても維持費がかさむ一方なのだから、既存を活かしながらつくる。
機能的(=「モノ」と「コト」が一致した)な住宅は(「コト」が変化して)どうせすぐ機能的でなくなるのだから、機能的な方法以外でつくる。
その2つを大事にしたいなーと思っています。
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で、そう思った時にオノ・ヨーコさんのパフォーマンスが超ナイスなものに見えてくるのよ。
なぜならこのパフォーマンスは、
- 「コト」を失った既存の「モノ」に対して新たな「コト」をあてはめることで、
- 既存を活かしながらつくることと、機能的な方法以外でつくることの両方を実現している
ように思えるからです。
こんな作り方をされた建物のひとつが、ロンドンにあるテート・モダン(@Tate)です。
もしかして出張中に行って見た?
これはもともと発電所だった建物を美術館に再生した事例です。
つまり
もともとの建物は発電所という「コト」のために機能的に作られた「モノ」だったんだけど、
発電所という「コト」が無くなっちゃって、
美術館という別の「コト」を後付けであてはめた
というものです。
ここでは、
発電所という「コト」のためにつくられた「モノ」に、美術館という「コト」をあてはめる
という事が起こっています。
その結果、あり得ないような巨大な展示空間が確保されています。
新築や機能的な方法ではまずこんなデカい展示空間は作らないです(なぜならコストがものすごくかかるから)。
そりゃ、展示という「コト」だけにマッチした「モノ」としての展示空間をつくりましょう、ってなるよね。
こんなデカい展示空間が生まれたのは、
かつて発電機があったタービンホールを展示空間として読み替えたからです。つまり、
- タービンホール「コト」を失った、既存の室という「モノ」に、展示室という新たな「コト」をあてはめることで、
- 既存を活かしながらつくることと、機能的な方法以外でつくることを両立している
からこんな展示空間が生まれたのかなーと思っています。
しつこいですが、普通につくるとこんなものはできません。
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Aという「コト」にはaという最適な「モノ」があり、
Bという「コト」にはbという最適な「モノ」があり、
Cという「コト」にはcという最適な「モノ」があり、
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Nという「コト」にはnという最適な「モノ」がある。
というふうにぼく達は思い込んでいるけれど、
オヨ・ヨーコさんやテート・モダンなんかを見ていると案外そーでもないなーと気がつきます。
コトAにはモノbやcでも満たせるし、モノaはコトBやCにも役に立つ。
そーいった自由さを獲得できたらいいな、と思っています。
そのために、
コトAのためにつくられたモノaに対してコトbをあてはめる
という作業がとっかかりになるのだろうな、と思っています。
まさかこの文章を読んでくれてるとは1ミリたりとも思っていないけれど、
そんなことを思っていたりします。
なんてね。
では、また!
はじめましての方へ
- 自己紹介:ぼくのことと再生建築について
- スタートのきっかけ:新築じゃない。でもリフォーム・リノベ・コンバージョンでもない、僕の仕事について
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