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工事区分を知らないビルオーナーやテナントは損する理由

この言葉を知っていますか? 

ぼくは社会人1年目の頃にテナントビルの設計監理を担当して初めてこの言葉を知ったのですが、思った以上に不動産に関わっている人でも知らないもんだなーと思っています。必須の知識なのに!

 

A工事・B工事・C工事

もしあなたが個人や同族経営で「テナントビルの運営」か「テナントとして店舗に入居」しているのであれば、これは絶対に知っておかないとダメな言葉。知らないとほぼ100%損すると思って良いです。

テナント工事につきまとってくるは工事区分。ざっくり説明すると「ある工事に対して『誰がお金を出すのか』『できたモノは誰の財産か』『誰が施工業者を指定するのか』を定義すること」です。

具体的には下記の図を見ていただくとして。

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上記の図はテナント工事における一般的な工事区分を示しています。工事にはA工事、B工事、C工事の3種類があります。それぞれ「誰がお金を出すのか」「できたモノは誰の財産か」「誰が施工業者を指定するのか』が異なることが分かると思います。

 

A工事はオーナー工事、C工事はテナント工事

A工事というのは「ビルオーナーが」、「ビルオーナーのために」、「ビルオーナーのお金で」、「ビルオーナーが選定した施工業者に工事をさせる」ことです。ビルの屋上の防水を改修したりといった工事が当てはまります。

C工事というのは「テナントが」、「テナントのために」、「テナントのお金で」、「テナントが選定した業者に施工させる」ことです。新しく開店するお店が占有部の工事をするイメージですね。

・・・とここまではだいたいの人が分かると思うのですが、「これ以外の工事はしたことないよ!」って人はほぼ100%損しているので、ここから下は目をかっぽじって読んでみて下さい(笑)

 

テナントのためにオーナーが行うB工事

実はA工事とC工事の2種類だけではいろいろと問題が発生するのです。その例がこんな感じ。

  • テナントのオフィスが退去して、飲食店が新しく入居することに。そのテナントから「ガンガン料理をするから、空調のスペックを上げて欲しい!」と言われた。ところがウチの空調機はオーナー資産で、数年前に更新したばっかり。テナントのためにオーナー工事にすると出費がかさむし、かと言ってテナントに勝手に工事させるのも・・・。
  • 新しく入居するテナント(飲食店)が、「ウチの店は水と電気をいっぱい使うんで、ウチのフロアの給水量と電気容量を上げてもらっていいですか?!」と言ってきた。水と電気の供給というテナントビルのライフラインなら、いつも使ってる信頼のある業者に工事してもらいたいんだけど・・・。もちろん費用はテナント持ちで。

上記に共通しているのは、「ビルオーナーの資産を」、「テナントの希望によって」工事することです。この時に悩ましいのが「誰がお金を出すのか」、「誰が施工業者を決めるのか」という問題。

結論としては冒頭の図にあるとおり、

  1. (テナントの希望でするのだから)お金はテナントが出し、
  2. (テナントがお金を出すと言ってもそもそもオーナーのモノを工事するので)財産としてはオーナーの所有になり、
  3. (オーナーの所有物を扱う工事なのだから)施工業者はオーナーが決める

 というのが一般的です。

 

B工事の進め方

上記のとおりちょっと特殊なB工事なので、進め方も

  1. テナントからビルオーナーに希望の工事概要を伝える
  2. ビルオーナーが工事業者から見積をとる(テナントがお金を出すから値段はあまり気にしてない・・・)
  3. ビルオーナーからテナントに見積を提示する
  4. テナント側で工事内容を調整して1にもどる
  5. 以降、合意できるまで繰り返し

という感じになります。ポイントは2で、テナントにとっては工事業者がビルオーナーに指定されるのでコストコトロールが難しいという側面があります。

一方でビルオーナーにとってはビル側の財産をテナントで勝手に工事されて品質を確保できないことは大きなリスクを抱えることになります。 

 

貸し方基準を確認しよう!

 

工事区分はけっこう揉めたりするとやっかいなことになるので、入居や工事の契約をする前に確認しておきたいところ。大手企業の保有するビルでは貸し方基準や工事区分表が整備されています。

我々設計事務所でもこれらの作成をお手伝いすることがよくあります。設計図を描く以外の仕事もあるんですね〜。

 

 

では、また!

 

 

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