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建物の寿命は耐用年数じゃなく躯体によって決まる

建物の寿命として最もよく参照される資料といえば、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」ですね。用途によりますが、この中で耐用年数は木造で22年、鉄骨造で38年、鉄筋コンクリート造で47年と定められています。でも、これらの年数が経過すると建物が使えなくなるのかというと、そうではないことが多いことは普段の生活で感じますよね。

 

建物の寿命は躯体の寿命で決まるよ

他の資産に比べて、建物は外装、窓、構造体、内装、設備といったたくさんのパーツ・要素から構成されていて、それぞれ担う機能やコストが異なるという点で特徴的です。設備機器は30年ほどで物理的な寿命を迎えるし、内装の壁紙なども30年経てば汚れが目立ってきたり隅が剥がれてきたりしますよね。

一方で、構造体の鉄骨やコンクリートは適切にメンテナンスをすれば100年は持つと言われています。前回の東京オリンピック以前に建てられたビルも、未だ多くが現役です。実は国内最初期の鉄筋コンクリート造の建物は建設から100年以上が経っているのですが、まだまだ躯体は健全であるものも多いです。

建物を構成している要素のほとんどは、数年ごとの小規模な手入れや30年ごとの大規模な改修により対処することが可能です。唯一、躯体だけは更新ができないので、建替えが必要になるのは(つまり耐用年数を迎える時期は)躯体が物理的な寿命を迎えた時と言えます。

ちなみに、「税法上の耐用年数」は「躯体の物理的な寿命」とあまり関係がないのです。(税法上の耐用年数を迎えたからといって、その建物が使えなくなることは全くありませんよね。)

 

じゃあ、躯体の寿命は何によって来まる?

躯体に最もよく使われる材料のひとつは鉄筋コンクリートですが、これはコンクリートと鉄でできています。

結論的には、鉄筋コンクリートが物理的な寿命を迎えるタイミングは「鉄筋が外気や水に晒されるようになった時」であり、具体的には「コンクリートのひび割れや中性化深度が鉄筋まで達した時」です。

コンクリート古代ローマでも使われた素材で、コロッセオなんかもコンクリート製です。古代ローマ人の遺跡が現在進行形で証明しているように、コンクリートの物理的な寿命は数世紀に及ぶのです!。*1一方、鉄はコンクリートに比べるともろくなりやすくて、錆びることで比較的容易に寿命を強度がなくって(躯体としては寿命を迎えて)しまします。

このことから、鉄筋コンクリート造の構造体が物理的な寿命を迎える最大の要因は、内部の鉄筋の腐食なのです。ちなみに鉄筋コンクリート造では、腐食に弱い鉄筋を、コンクリートで覆うで腐食の原因となる水や空気から守ることで耐久性を確保しています。また、コンクリートのアルカリ分によって、腐食の原因を中和できることもポイントだったりします。

 

次回予告:既存建物の躯体の寿命を知りたい人へ

既存を全面リニューアルして再生・長寿命化させるには、「躯体の寿命があとどれくらい残っているか」がすごく重要ということになりますよね。次回は既存建物の躯体の寿命を調べる方法について書いてみようと思います。

 

 

では、また。

 

 

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*1:地震の有無や気候条件なども関係するので、コロッセオをそのまま日本に持ってくればローマのように千年単位で保存できるかというのはまた別の話です。