既存建物の寿命を調べる方法(RC造編)
前回は
- 建物の寿命は耐用年数とは異なる
- 建物の寿命は躯体の寿命に左右される
- 代表的な躯体である鉄筋コンクリートの寿命は、内部の鉄筋が腐食した時
という話をしました。で、今回はタイトルどおり「既存建物の寿命を調べる方法」について書くです。ちなみに今回も鉄筋コンクリート造に絞ってます。
目次:
- 前回の補足:かぶり厚さ
- 1.設計図書からかぶり厚さを調べる
- 2.建物からかぶり厚さを調べる
- 3.内部の鉄筋の腐食を調べる
- 4.コンクリートの圧縮強度を調べる
- 5.中性化深さを調べる
- 6.躯体の寿命を推定する
前回の補足:かぶり厚さ
前回の記事で、鉄筋を錆びさせないための工夫として
鉄筋コンクリート造では、腐食に弱い鉄筋を、コンクリートで覆うで腐食の原因となる水や空気から守ることで耐久性を確保しています。また、コンクリートのアルカリ分によって、腐食の原因を中和できることもポイントだったりします。
と紹介しました。これをちょっと補足すると、「鉄筋を覆うコンクリートが厚ければ厚いほど、内部の鉄筋は錆びにくい」ことは容易に想像できますね。この「鉄筋を覆うコンクリートの厚さ」のことをかぶり厚さと呼びます。今回の重要ワードです。
話が逸れますが、かぶり厚さは鉄筋を腐食から守るだけでなく、火災時の熱から守る役割も持っています。鉄は水だけでなく火や熱にも弱いのです。。。
1.設計図書からかぶり厚さを調べる
いちばん簡単にかぶり厚さを調べる方法は設計図書を確認することです。
本格的な調査のためのプレ調査といった位置づけです。
机を整理していたら、以前やった再生案件の調査書が出てきた。①既存の構造図②コア抜きをしたコンクリート③鉄筋調査これらが設計の大事な資料になります☺︎
2.建物からかぶり厚さを調べる
設計図書のとおりにかぶり厚さが確保されているかを確認します。実際には、躯体のコンクリートをはつって(ほじくって)、内部の鉄筋を露にします。で、コンクリートの表面から内部の鉄筋までの深さを計ります。
身も蓋もないっちゃないですが。
3.内部の鉄筋の腐食を調べる
実際に鉄筋を見て、どれくらい錆びているがをチェックします。ここでキレイな鉄筋が出てきたら、現状ではまだまだ健全だということが証明されるわけです。逆に既に錆びていたらちょっとピンチです。
鉄筋が錆びていた理由はたとえば以下が考えられます。
ちなみに1.の場合は、部分的なものであればなんとかセーフのこともあります。全体的にクラックがあり、建物中の鉄筋が腐食している場合はアウト。建替えるしかないです。
また、2.の場合もヤバい、というかほぼアウトです。
尚、この調査では、設計図書のとおりに鉄筋が入っているかどうかもついでに調べることができます。設計図よりも本数が少なかった・細かったということがないかを一緒に調べることをオススメしています。
4.コンクリートの圧縮強度を調べる
かぶり厚さと同じくらい身も蓋もない方法なのですが、既存建物のコンクリートを抜き取って、機械で押しつぶします。そのコンクリートがつぶれた時の強度がそのコンクリートの強度ということです。すっごい原始的。シュミットハンマーという機械を使えば躯体を削る必要はないのですが、精度の面ではやっぱり、ね。
コア抜きの様子は以下からどうぞ。
【躯体調査】再生の設計前にすること - アキヒロワタナベの再生建築について
5.中性化深さを調べる
かぶり厚さでの説明の繰り返しになりますが、鉄筋コンクリート造では鉄筋を錆びさせないために以下のような工夫がなされています。
鉄筋コンクリート造では、腐食に弱い鉄筋を、コンクリートで覆うで腐食の原因となる水や空気から守ることで耐久性を確保しています。また、コンクリートのアルカリ分によって、腐食の原因を中和できることもポイントだったりします。
ここでは、コンクリートのアルカリ分がどれくらい残っているかを調べます。かぶり厚さが確保されていても、かぶりコンクリートが中性化してしまってアルカリ性でなくなってしまうと、内部の鉄筋は錆びやすくなってしまうのです。
具体的には、鉄筋を掘り出した場所や抜き取ったコンクリートコアにフェノールフタレイン液をかけて、色が変わるかどうかをチェックします。中学校のときに理科の実験でやったあれです。
鉄筋部分やその付近が赤くなっていればセーフ。まだまだ鉄筋まわりはアルカリ性です。反対に、表面側は赤くならないことがほとんどです。これは、「コンクリートの内部はアルカリ性が保たれているが表面は少しずつ中性化している」ということを示しています。
6.躯体の寿命を推定する
これらのデータをもとに、躯体があと何年くらい健全であるかを推定します。
具体的にどのデータをどう使うのかは、機会があればご紹介しますね。
では、また。
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