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【用途変更】100m2未満は確認申請が不要だけど法適合はさせようね

※2016.11.13、2018.10.6 表現を少し修正しました。
※平成30年3月6日の閣議決定により、用途変更が必要なのは200m2以上となりそうです。

○○な工事をしようと思うのですが、これって用途変更の申請が必要なんでしょうか?


用途変更の確認申請が必要な場合は、原則以下のとおりです。

  • 既存の用途を特殊建築物に変更する
  • 用途を変更する面積が100m2を超える


具体的な例をあげると

  • 事務所ビルの1階に150m2の飲食店を開業するとき→用途変更の確認申請が必要
  • 逆に、150m2の飲食店部分を事務所に変更するとき→申請が不要

です。


このように、建物の全体または一部の用途を変更するときは、
どのような用途に変更するのか
またどの程度の広さで用途を変更するのかによって
申請が必要かどうかが判断されます。


「申請が不要=法に適合しなくてOK」ではない

また良くある勘違いのひとつですが、
用途変更の確認申請が不要だからといって、「建築基準法や消防法などを無視してよい」ということではありません。
ココ要注意です。


用途変更の確認申請を出すときでさえ、「完了検査がない→誰も検査しに来ない→法に適合しなくてもOK」と思っている方や
そもそも「もともと法にあっていた建物の用途を変えるだけだから、確認申請はいらない」と思っている方が、
ときどきいらっしゃいます。


本当に要注意なのですが、原則としては
用途変更の確認申請が必要だろうが不要だろうが、現行の規定には適合させなければならない」と考えるべきです。
なぜなら建物の用途によって、それぞれ避難の考え方や求めらせる環境的な性能(採光・換気など)が異なるからです。


たとえば、
事務所用につくられた建物は、物販店舗が入居できるほどの避難施設が設けられていないことがほとんどです。
なぜならば、建築基準法や消防法では設置しなければならない避難施設のスペックが

物販店舗>事務所

だからです。


なので、事務所から物販店舗に用途変更した場合は、
用途変更の確認申請が必要だろうが不要だろうが、

  • 事務所から物販店舗に用途変更する

     ↓

  • 必要な避難施設のスペックが上がる

     ↓

  • そのままでは万一のときに避難ができない恐れがある

     ↓

  • 必要とされる避難設備を設ける

という考え方になるのです。


では、建物の用途を変えるときは現在の法規を全て守らなくてはいけないのか?
というと、それはまた違うのです。


「確認申請に出す=全ての法に適合が必要」

中には(たとえ確認申請を出す場合であっても)今の法規にあわせなくても良いとされている規定があるのです。
なかなか分かりにくいですね。


たとえば、
3000m2の建物があったとします。既存の用途は事務所です。そのうち150m2に飲食店が開業することになりました。
この場合は用途変更の確認申請が必要です。


しかし、
150m2の用途変更のために、建物全体に渡って現行の規定にあわせることは非現実的です。
たとえば現行の高さ制限(道路斜線・隣地斜線・日影規制など)にあわせて建物を削るなんてことは
現実的ではありません。


こういった規定については
(既存が適法であったことを前提として)現行の規定にはあわせなくてもOK
とされています。このようなものをぼくたちは
既存不適格の維持」とか「既存不適格に対する制限の緩和
と言ったりします。


既存不適格とは、

新築時には適法だったけれど、
法が改正されたり新しい規定がつくられたことにより、
今の規定にはあわなくなった状態

のことを指します。


維持できる既存不適格

現状を維持することのできる、つまり現行の規定にあわせなくても良い既存不適格を一部ご紹介。
あげるとキリがないですが、用途変更の場合では、以下のような規定が既存不適格であった場合は、現行の規定にあわせることなく確認申請が受理されます
維持できる既存不適格は建物全体に関わる規定が多いので、1区画だけを用途変更する場合では、その区画の工事ではほぼ現行法に合わせることになりますね。

  • 道路斜線
  • 隣地斜線
  • 高度地区
  • 日影規制
  • 構造耐力※


※構造耐力について

  • 用途を変更することで建物にかかる荷重が増加する場合は、安全性の確認が必要です。建築基準法ではそれぞれの用途によって単位床面積あたりの積載荷重が決められています。たとえば住宅の床は180kg/m2の荷重に耐えられるようにしなければいけませんが、それを事務所に変更すると300kg/m2の荷重に耐えなければなりません。


ただし、これらの既存不適格における制限の緩和はあくまで「既存不適格の場合にのみ有効」であることに注意です。
既存不適格とは、

新築時には適法だったけれど、
法が改正されたり新しい規定がつくられたことにより、
今の規定にはあわなくなった状態

のことでした。


つまり、新築時から適法でなかった場合は既存不適格ではありません。既存不適格ではないので制限の緩和もうけられません。つまり法にあわせた是正などが必要になります。どんな是正にするかがポイントだったりするのですが…。


ここまでの流れをまとめると以下のようになります。

  • 100m2を超えて特殊建築物に用途を変更するときは、用途変更の申請が必要
  • 「申請が不要=法に合わせなくてOK」ではない
  • 「申請が必要=『全ての』法にあわせなければならない」でもない。維持できる既存不適格がある
  • 「違法」は「既存不適格」とは違う。原則として是正が必要で、維持することは不可。


確認申請の提出が不要というのは「工事の許可を行政から得る必要はない」ことを意味しますが、
それは「法律を無視して工事しても良い」ということではありません。

工事をするときは、現行の規定にあわせなければならない規定と、既存不適格を維持できる規定があります。



2018年秋に竣工した、検査済証なしの用途変更です。




▼こちらからご覧頂けます。
www.aki-watanabe.com




では、また。



はじめましての方へ

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