地震が起こりにくいと言われてきた九州で大地震が起きましたね。
最大震度7だと... https://t.co/HEOasZvpdt
— 渡邉明弘 aki-watanabe (@Akkun_Nabechan) 2016年4月14日
今回はタイトル通り「旧耐震建築物」についてまとめます。
「旧耐震」=昔の耐震基準でつくられた建物
これがワンフレーズで表した旧耐震建築物です。
具体的には昭和56年6月1日より後に建築確認を受けた建物のことを指します。
この日に耐震基準がガラッと変更されたため、
この日より前に建築確認を受けているかどうかが「旧耐震」と「新耐震」の分かれ目になります。*1
どうやって耐震基準が改正されてきたかという背景は以下のとおり。
耐震基準は大地震のたびに改正されてきた
下図は日本で起こった大地震と耐震基準改正の履歴を時系列にならべたものです。
左が過去〜右が現在です。上の段が大地震の歴史、下の段は耐震基準の改正履歴です。
この図から分かることは、大きな地震時が起こった後に耐震基準が改正されているということです。
上記の表を時系列で箇条書きにすると以下のようになります。
近代的な耐震基準が最初に設けられたのが1923年です。まだ100年も経っていないのですね。
はじめから完璧な耐震基準をつくることなんて絶対に不可能なわけで、
ぼくたちの先輩は90年くらいをかけて
最新の耐震基準をつくる → 建物が震災に遭う → 耐震OKと思っていた建物に被害が!→ 耐震基準の未熟だった部分を検証 → 耐震基準を改正 → 建物が震災に遭う → ・・・
というループを繰り返しながら、耐震基準と耐震技術を向上させてきています。いくら机上で設計・計算しても、当時の人たちにとって、耐震基準が完全かどうかなんて実際に地震が来ないと分からないという側面があったのです。
ちなみに、1995年に起こった兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)では、旧耐震の建物と新耐震の建物で被害に大きな違いが認識されています。この震災で「ほぼほぼ躯体(建物の骨組み)の耐震基準は整った」というのが大方の見方みたいで、現在では躯体以外の天井やエレベーター・エスカレーターなどの耐震基準が制定されはじめています。ただし東日本大震災では旧耐震も新耐震もそこまで被害の差はなかったというのはここだけの話。
今回の地震でも旧耐震の建物が中心に倒壊していますね。
【熊本・宇土市役所の被害は】
— NHK生活・防災 (@nhk_seikatsu) 2016年4月15日
市役所の建物に倒壊の危険性が高まり、職員が外に避難しているということです。 pic.twitter.com/we4Lkrd2Qw
「竹型」か「石型」か
耐震性にも実は大きく2つの種類があります。
1つは「強度型」と呼ばれるタイプで、もう1つは「靭性型」と呼ばれるタイプ。
「強度型」というのは言葉のとおり、地震の力に対して建物の強度で対抗する(変形しない)というタイプの耐震性です。地震に遭っても建物が変形することが無いように設計されていますが、許容できる以上の地震力が建物に加わった場合は一気に建物が崩れるような壊れ方をします。
もう1つの「靭性型」というのは粘り強さで地震に対抗するタイプの耐震性です。ある規模以上の地震に遭うと(人が避難できる程度に)建物が変形し、建物が変形することによって地震のエネルギーを吸収するという考え方です。
建物が変形する「靭性型」の方がなんとなく危ないような気がするかも知れません。が、建物が変形するというのは危険が迫っていることを建物が知らせてくれるということでもあります。ギリギリまで粘っていきなり建物がペシャンコになる方がよっぽど危ない、という考え方もあるのですね。
【熊本市西区のマンション倒壊現場は】
— NHK生活・防災 (@nhk_seikatsu) 2016年4月15日
7階建ての1階部分が押しつぶされています。 pic.twitter.com/w41rchpitR
九州にいると地震に遭うことはめったにありません。
揺れに慣れていない方も多く、かなり現場は混乱したのではないでしょうか。
一刻も早い回復を祈ります。
では、また!
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*1:新耐震基準が施行されたのは昭和56年6月1日ですが、それ以前に事前の公布がされています。従って昭和56年6月1日より以前に建築確認を受けた建物であっても、耐震基準の改正を見越して新耐震基準でつくられている可能性があります。