再生建築の全てを解説するブログ

 既存を活かすからこその価値を😃

【リノベ・既存再生のリスクヘッジ】回避したい落とし穴😰

再生が新築と大きく異なる点の1つに「既存建物がどのくらい大丈夫なのかが分かりにくい😥」という点があります。言い替えると「既存の建物が再生できるのかを分からないままにプロジェクトを進める」というリスクを抱えることになります。
今日は、「そもそも既存躯体を使うにあたり気をつけるリスク」と「リスクを回避するための方法」を解説するです。



既存建物を使うにあたり気をつけたいリスク

最も怖いかつ分かりにくいのが「既存建物の遵法性」です。違法な建物はそもそも使うことはできないというのが原理原則。*1 再生しようとしている建物が

  • 適法   :現在の法令に適合している
  • 既存不適格:昔は適法だったが、その後の法改正や新法設立によって、今の法令に適合しなくなった
  • 違法   :最初から法令に適合していない、または維持が認められていない既存不適格が存在する

のどの状態にあるのか、よーーーーく調べる必要があります。調べる方法には以下のようなものがあります。

  • 最も手軽で安心なのは検査済証をチェックすること。検査済証とは、建物が竣工したときにお役所などの職員が出来上がった建物を実際に検査し、その建物が法令に適合していることを認めた証となる書類。
  • 有効な書類がひとつも残っていない、残っている書類だけでは不十分なときは、既存図面を復元してチェック。

耐震性や躯体の強度

何度も書いていますが日本の耐震基準は昭和56年で大きく変わっていて、昭和56年より前に建てられた建物は旧耐震建築物といって改正前の耐震基準をもとにつくられているため、現在の耐震基準を満たしていないものが多いです。
旧耐震建築物が現行の耐震基準を満たしていないのか、どのくらい耐震性が足りないのか、それを調べるには「耐震診断」という作業をします。これは簡単にいうと、改正前の球体新基準でつくられた建物が、現行の耐震基準に対してどのくらい耐震性を有しているかを計算するという作業です。計算結果は建物によって本当にピンキリで、全く補強する必要がないものから2倍以上も強度をアップしないといけないものまで実に様々です。しかも、必ずしも築年数が古い方が弱いってものでもない。
もうひとつの作業として、「躯体調査」というものをします。先の耐震診断が「建物全体の骨組みの強さ」を評価するのに対して、こちらは骨組みを構成している「部材そのものの強さ」を評価するものです。具体的にはコンクリートの強度・中性化進行具合、鉄筋のさび具合・種類や太さ・形状、鉄骨のさび具合・溶接の状態、建物全体の傾き、ひび割れの状況などです。



プランニングが成り立つのか

遵法性も耐震性もクリアしたら、次は実際に計画が成り立つのかをチェックをします。既存建物を利用するので新築みたいに何もかも思いどおりに形をつくるわけにはいかず、「遵法性と耐震性をクリアしながら機能的に満足する間取りを考える」ことが必要になります。



これが結構難しい
そう。これが結構難しいのです...。
たとえば古民家を簡易宿泊所に用途変更するプロジェクトでは、

  • 維持することができない既存不適格(採光など)を現行の規定にあわせて改修し、
  • 維持しても良い既存不適格(道路斜線など)を維持しつつ、
  • 住宅から宿泊施設とすることによって新たに発生する規定にも適合させ、
  • 耐力上有効な位置に補強を入れ、
  • 魅力的な宿泊施設となるようにプランニングを計画する
  • そもそもこれらの前に既存建物がどういった法的状態にあるのか(適法、既存不適格、違法のどれか?既存不適格はどんなところがあるか?それは維持出来るのか、現行規定に適合させないといけないのか?)を調べ、
  • さらにどういった構造的状態にあるのか(旧耐震か?旧耐震なら建物全体でどれくらい耐震性が足りないのか?躯体のコンクリートや鉄骨は問題ないか?)を整理する

という作業が必要になるのですが、こーゆー設計を習得する機会って本当にごくごく限られている。大学の授業や建築士試験ではほぼ全てが新築がベースにされているし、既存再生の実務でも表面だけオシャレに塗り替えるリノベーションしか携わる機会に巡り会えない。



いきなり取りかかっちゃダメよ
新築に比べてこれだけ不確定要素が多いプロジェクトなので、なーんも考えずにいきなり設計をはじめようものなら

  • 耐震補強が必要なことが後から判明して考えていた間取りができない😥
  • 既存不適格のあることが後から判明してしかも現行の規定にあわせて改修しないといけない。これまで考えてきたプランが全てお蔵入り😓
  • いざプランが完成して各確認申請を出しに行ったらプランが法的に全然NGでイチから計画のやり直し😭
  • そもそも法的・構造的に必要な処置を施した時点で予算オーバー。希望の間取りどころじゃない😱

なんていう冗談にもならない顛末になってしまいますw


そーゆー事態を未然に防ぐために、まずはざっくりと調査・ラフプランニングをして「想定しているプロジェクトが上手く進みそうかを事前にチェックする」という実現可能性の検証がとても重要なのです。どこまで密に検証をするかはオーナー次第ですが、時間と費用をかければその分だけリスクは減り、密度を下げれば期間とコストは下げられますが不安材料は残ります。当たり前っちゃ当たり前。ぜひぜひその辺は適切な情報をもとに正しい意思決定をしてプロジェクトを進めてください。




では、また!



はじめましての方へ

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*1:例外的に是正することによって利用し続けられることもなくはないけど