実行役から参謀役へ
こんにちは。ワタナベです。
かなり前ですが、こんなことをつぶやきました。
これは、
— 渡邉 明弘 / Aki-Watanabe (@Akkun_Nabechan) 2019年3月11日
社会が高度化・複雑化して
「自分はそもそも何を求めているのか?」
を正確に理解点把握する事が困難になった
こと自体が知られていないせいだと思う
・自分の要求を定義する段階から設計者に相談する
なんて想像だにしない
人が大半ではなかろうか
お金払うとか意味不明なんやろな
建築家の社会的なイメージは
— 渡邉 明弘 / Aki-Watanabe (@Akkun_Nabechan) 2019年3月11日
まだまだ
・超越的なセンス才能を発揮して表層をデザインする
・決められた要求を技術的に満たす
・自分(施主)の描いたプランを技術的に成立させる
といった感じに留まってるんやないかなぁ
ひとことで言えば「言われたとおり設計してるだけじゃダメだろ」ということですが、
ひと昔前まで、建築家にくる依頼と言えば
- ◯◯◯床の病院を作ってください
- ◯◯◯部屋で◯◯◯㎡のホテルを計画したいです
- ◯◯人で住む家をお願いします
みたいな相談が大半でした。
ところが最近では(ぼくがこういった仕事をしているからなのかも知れませんが)
・ウチのマンション、旧耐震だし老朽化してるし空室も増えてきたけどどうしよう?
・テナント入れ替えが発生するんだけど、検査済証がなくて客付けに苦労してる 汗)
・事業性も考えなきゃいけないし、相続分のキャッシュも残しておかないと・・・
・建て替えると面積が小さくなっちゃうし、先代から引き継いだ思い入れもあるから何とか残したい!
といった漠然としたご相談でいらっしゃる方がぐっと多くなりました。
言いかえれば、建築家に求められる役割が
・想いをカタチにしてくれる実行役 から
・問題のありかや事業戦略から一緒に考えてくれる参謀
に変わってきているということです。
このような変化がうまれてきている背景には、建築をとりまく環境が複雑化したことにあります。
昔は規模と用途さえ決めれば、予算と収益を想定して事業計画を立てることができました。
人口はどんどん増えているのに住宅や施設が足りておらず、空き地がたくさんありました。
ところが今では民泊やオフィス付きシェアハウスといった複雑な使い方が広がりつつあるし、
人口が減少して床があまるというはじめての事態に世の中はなっているし、
再性建築は新築や建て替えとは違って法的にも技術的にもかなり複雑。
問題は何なのか、どうすれば上手くいくのか、何ができるのか、
とてもオーナーひとりで考えることができないまでに状況が複雑化してしまったのです。
なので、最近ウチの事務所で手がけているプロジェクトは
・はじめて福祉施設をつくる企業さんと、事業のブランディングを一緒に考えながらふさわしい物件を探す
・マンションの耐震診断をしながら、エリアリサーチや収支計画を踏まえてホテルへの転用をシミュレーションする
・オーナーさんの自宅を兼ねるテナントビルを、どうすれば先代から受け継ぎ次世代に引き継ぐことができるか、最適な資産化をデザインする
といった感じになっています。
これらはどれも
「◯◯◯をつくって欲しい」といった分かりやすいものではなく、
「そもそもぼくらは何を大事にしてるんだろう?」という自問自答のような作業です。
どこにも模範解答は転がっていない。自ら問題を探し当て、答えを創造することが求められます。
そこは建築家に頼む段階じゃないだろ、とも思われそうですが
そもそも建築家は古来から「何のために建築をつくるのか」をずっと考えてきたのです。
教会をつくる時は宗教が果たすべき役割を、
お城を作る時は建築家は城主の攻防や統治を、
住宅を作る時は庶民の民主的な生活のあり方を、
といった具合でしょうか。
色んな問題を当事者と一緒に考えて、
解法としてどんな建築がふさわしいかを考える
それが本来の建築家なのだとぼくは思っています。
ということで、
ぼくたちに求められている職能はもはや「課題解決の実行役」として
・決まった用途や仕様や規模の建物を設計するという
だけではなく、
みなさんの「参謀役」として
・当事者と一緒に問題のありかを探し当て、
・どのようにすればより良い状況がつくれるのかを分野横断的に考える
・もちろん実行役としての設計や工事監理も担う
というものに変わっているのだと思います。
楽しい時代になってきたものです。
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