リノベーションにおける解体工事は躯体状況のチェック
解体工事のないリノベーションなんて存在しないと思うのですが、解体工事は躯体が丸見えになるので、その健全性をチェックするのにまたとない機会です。
が、ほとんどのリノベーションは躯体のチェックまでなされることは無いように思えます。
健全でないストックを残しても意味がない
耐震診断を行うなどを除けば、躯体調査自体はやれって決められてる訳でもないのですが...。大阪のブロック塀の件もありますし、ウチでは躯体のチェックを必ずさせて頂いています。
既存ストックの利活用はもはや政治的な正しさを持つまでになったくらいに「正しい」行為と認知されるようになりました。が、大前提は健全なストックを残すことです。
どんだけお金がなくても、表層をキレイにして躯体がボロボロのまま建物を使い続けるというのは、良質なストックを増やすという社会の要請に明らかに逆行してると思うのです。下敷きになって死にたくないですよね....。
躯体の施工不良
下記の写真は、とある再生建築の工事現場のものです。どこにどんな施工不良があるかマーキングして、補修の指示をゼネコンさんに出しています。
具体的な施工不良の例は以下のようなものがあります。
1.じゃんか
コンクリートの材料であるセメントと砂利が分離してしまったりする現象で、新築時におけるコンクリート打設の不良です。コンクリートの材料がきちんと混ぜられていないために、強度の不足や中性化、鉄筋の腐食を引き起こします。
2.中性化
読んで時のごとく、コンクリートが中性化する現象のことを言います。コンクリートはアルカリ性なのですが、経年劣化によりアルカリ分が抜けてしまったり、新築時の施工不備で最初からアルカリ分が不足している状態です。
コンクリート自体はそんなに問題ではないのですが、コンクリートのアルカリ分が抜けて中性化してしまうことで、中の鉄筋が酸性になりやすくなってしまいます。鉄筋が酸性になるというのは、要は錆びるということです。鉄は錆びると強度がなくなってしまい、地震時などに耐えられない構造体となってしまいます。
鉄筋は水や空気にさらされるとすぐに錆びてしまうのですが、アルカリ性のコンクリートで覆うことによって、何十年も錆びずにいられるのです。ところがコンクリートが中性化してしまうと鉄筋を守れなくなってしまい、ボロボロに錆びてます。このことがマズいのです。
3.かぶり不足
「かぶり」とは「鉄筋のまわりを覆って鉄筋を保護しているコンクリート」のことです。かぶりには必要な厚さが決められているのですが、昔の建物だとけっこういい加減で、中にはコンクリートじゃなくモルタルでかぶりもどきの施工をしていたり、まったくかぶりがなく錆びまくった鉄筋が露出してしまっていることがあります。
かぶりが不足していることが悪影響を及ぼす理由は、中性化と同じように鉄筋を保護できないことにあります。かぶりは鉄筋を水や空気による発錆を防止するという役割はもちろん、火災時における熱から鉄筋を保護するという役割も担っています。鉄は以外と熱に弱く、400℃くらいで2/3に、1000℃を超えると強度を期待できなくなってしまいます。
ということで、鉄筋コンクリートの躯体は以外と繊細な鉄筋をいかに保護するか、というのがポイントなのです。
今も解体工事が進んでます
こちらは、ちょうどいま進んでいる現場の写真。どんな躯体がでてくることやら...。ちょっときた緊張の場面だったりします。
躯体を壊しても良いのか?!と思われることもあるのですが、かなりざっくり言うと耐震性に影響ない部分を選んで解体したり、解体後の耐震性もチェックしています。